高金利通貨のスワップは、持っているだけで毎日入ってきます。それが続くなら、生活費の足しにできるのではないか。そう考えたことのある方は、少なくないと思います。
この記事では、できるかどうかを論じません。必要な量を考えます。
出発点は、10万通貨で年5万円
10万通貨あたり1日130〜200円。これが、ランド円のスワップのおおよその幅です。1日150円で1年持ち続ければ、約5万円になります。この水準は、当サイトのスワップポイントとは何かで確かめた数字です。1日分がどこで切り替わるのかは、2分でも1日分が付く仕組みで数えています。
ここで、単位に気をつけます。10万通貨で受け取れるのは、月5万円ではありません。年5万円です。月に直せば、4,000円あまりです。
つまり「毎月5万円」を受け取ろうとすると、受け取るスワップが年60万円必要です。10万通貨で年5万円ですから、必要な建玉は12倍です。
毎月5万円・10万円・30万円に、何通貨が要るのか
四つの水準で並べます。
| 毎月の受け取り | 必要な量 | 建玉の大きさ | 3倍で持つなら |
|---|---|---|---|
| 5万円 | 約120万通貨 | 約1,190万円 | 約400万円 |
| 10万円 | 約240万通貨 | 約2,380万円 | 約790万円 |
| 20万円 | 約480万通貨 | 約4,750万円 | 約1,580万円 |
| 30万円 | 約720万通貨 | 約7,130万円 | 約2,380万円 |
毎月5万円で、約400万円。毎月10万円なら約790万円になり、毎月20万円では1,500万円を超えます。毎月30万円まで来ると、3倍で持つとしても2,300万円台です。
3倍という倍率は、この記事で勝手に置いたものではありません。急落に耐えるための目安として、当サイトが繰り返し使ってきた水準です。倍率ごとに耐えられる下落幅がどう変わるのかは強制ロスカットとは?にあります。
400万円を用意できないなら、どうなるか
表の「3倍で持つなら」は、実効レバレッジを3倍に置いた場合です。倍率を上げれば、必要な資金は減ります。
| 実効レバレッジ | 毎月5万円に要る資金 | 耐えられるおおよその下落幅 |
|---|---|---|
| 1倍 | 約1,190万円 | 約9.9円 |
| 3倍 | 約400万円 | 約3.3円 |
| 5倍 | 約240万円 | 約2.0円 |
| 10倍 | 約120万円 | 約1.0円 |
10倍で持てば、120万円で毎月5万円が受け取れる計算になります。数字だけを見れば、こちらの方が手が届きそうに見えます。
ただし、120万通貨は1円下げれば120万円動きます。資金が120万円なら、1円の下落でほぼ全部が消えます。持っていかれるのは受け取りの2年分ではなく、元手そのものです。
必要な資金を下げるというのは、耐えられる下落幅を同じだけ削るということです。この二つは、いつも裏表になっています。
リラなら、同じ毎月5万円が約75万円で届く
ここまではランド円で数えてきました。同じ問いを、トルコリラ円で置き直します。
スワップは1万通貨で1日20〜24円です。24円が続けば1年で約8,760円になります。どちらもトルコリラ円のスワップポイントは1日20〜24円で確かめた数字です。
年60万円を受け取るには、約68万通貨が要ります。リラ円を3.3円とすれば建玉は約224万円で、3倍で持つなら約75万円です。
| 毎月5万円に要るもの | ランド円 | トルコリラ円 |
|---|---|---|
| 1万通貨あたり1日 | 13〜20円 | 20〜24円 |
| 1万通貨の建玉 | 約9.9万円 | 約3.3万円 |
| 建てた金額に対する年利 | 5〜7% | 26% |
| 必要な量 | 約120万通貨 | 約68万通貨 |
| 建玉の大きさ | 約1,190万円 | 約224万円 |
| 3倍で持つなら | 約400万円 | 約75万円 |
ランド円の約400万円に対して、リラ円は約75万円。5分の1以下で届きます。
差がついているのは、受け取りの側ではありません。1万通貨で見ると、リラ円が20〜24円、ランド円が13〜20円。ほとんど変わりません。違うのは建てた金額の方です。1万通貨の建玉が、ランド円は約9.9万円、リラ円は約3.3万円。同じ量でも、リラは3分の1の金額で建てられます。
必要な元手が5分の1で済むのは、リラが5分の1の値段まで下げてきたからです。19年で対円の価値の9割以上が失われた結果として、今1万通貨を約3.3万円で建てられます。その下げ方はトルコリラはどこまで下がるのかで扱いました。
耐えられる下落幅も、同じ形で縮みます。3倍で持つときに耐えられるのは、どちらも値段のおよそ3分の1です。ランド円なら約3.3円、リラ円なら約1.1円。比は同じで、違うのは、その3分の1の下げが実際に起きてきたかどうかです。
1円下げたときに動く額も、同じだけ大きくなる
先ほどから述べていますが、同じ資金で建玉の量を増やせば耐えられる下落の幅が狭くなります。
10万通貨なら、1円下げたときの評価損は10万円です。受け取りの2年分にあたります。120万通貨なら、1円で120万円。こちらも受け取りの2年分です。
比は変わりません。量を12倍にすれば、受け取りも12倍、1円あたりの損失も12倍になるからです。変わるのは、金額そのものです。
そして、耐えられるかどうかを決めるのは比ではありません。金額です。1円で10万円の含み損なら持ちこたえられる人でも、1円で120万円が動く画面を毎日見続けられるかは、別の話になります。生活費をまかなえる規模にするというのは、そういう規模の振れを引き受けるということです。
ランド円が数日で何円動いた実例は、ランド円はなぜ急落するのかにまとめてあります。
受け取った額が、そのまま使える額ではない
表の金額は、受け取りの総額です。生活費として使えるのは、そこから税を引いたあとになります。
やっかいなのは、課税されるタイミングです。スワップは受け取った時点で所得になり、そのとき建玉に含み損があっても、税の計算には入りません。含み損を抱えたまま納税だけが出る、ということが起こりえます(この仕組みはスワップポイントに税金はかかる?)。
毎月の生活費として当てにする場合、この点は無視できません。受け取りが大きくなるほど、引かれる額も大きくなります。
受け取った現金は、放っておくと何も生まない
もう一つ、前提として押さえておきたいことがあります。
受け取った分を引き出して生活費に使えば、建玉は増えません。建玉が増えなければ、政策金利に変化が無い限り、翌月に入ってくる額も同じです。
この受け取りは、置いておけば育つ種類のものではありません。増やすには量を足すことになり、足せば1円あたりの損失も一緒に増えます。引き出さずに口座へ残した場合に何が起きるかは、別の記事にまとめています(スワップは複利で増やせるのか?)。
必要な量は、固定されていない
最後に、この表がいつまで使えるのかを確かめておきます。
スワップの原資は、南アフリカと日本の政策金利の差です。南アフリカが7.00%、日本が1.0%程度という、今の組み合わせから生まれています。日本銀行が利上げすれば差は縮み、同じ量でも受け取りは細ります(この層の見方は二層構造の金利差)。
そのとき、毎月5万円を保つには量を増やすことになります。量を増やせば、1円あたりの損失も増えます。金利が動くたびに、必要な建玉と抱える振れ幅が、同じ向きに動いていくわけです。
この表は、今の金利差での表です。固定された条件ではありません。
数えてみると、問いが変わる
「スワップだけで生活できるのか」という問いは、数えるとこうなります。毎月5万円で約400万円、毎月20万円で1,500万円超。そして1円の下げが、受け取りの2年分を持っていきます。
できる、できないの話ではありません。その資金でその振れというリスクを引き受けるかどうか、という話に変わります。
数えるところまでは、誰でも同じ答えが出ます。どこまでリスクを引き受けるかどうかだけが、個人で判断できる部分です。

