トルコリラ円は3円台です。その1リラを一つ買うのに、引かれる額は金融商品によって違います。FXなら買値と売値の差が1銭ほど、銀行の外貨預金なら片道で50銭です。

同じ通貨を、同じ日に、同じ数だけ持つのに、入り口で引かれる額がここまで開きます。しかもこの額は円で決まっているので、通貨の値段が下がるほど重くなっていきます。

この記事では、FX・外貨預金・外貨建てMMF・現地通貨建て債券という四つの金融商品を並べて、引かれる額と、終わり方の違いを見ます。

同じ1リラを買うのに、引かれる額が違う

金融商品1リラあたりに乗る額
FX(トルコリラ円)買値と売値の差が0.6銭〜1.4銭
外貨預金・インターネット片道50銭
外貨預金・窓口片道60銭
※FXのスプレッドはダイヤモンド・ザイの比較(2026年8月5日時点)にある原則固定の値で、会社ごとに差があり、適用される時間帯も決められています。外貨預金は三菱UFJ銀行「外貨預金の為替手数料」(片道、円貨と外貨の交換)より。

並べ方を揃えておきます。FXの0.6銭というのは買値と売値の差で、この差は買って売るまでの一往復に一度だけ乗ります。銀行の50銭は片道です。買ったあと、いつか円に戻すなら、同じ額がもう一度乗ります。往復で見ると、一方は1銭前後の差が一度、もう一方は50銭が二度です。

この形で入り口の額を比べられるのは、FXと外貨預金の二つです。MMFと債券は、販売する会社ごとに条件が異なります。この二つの金融商品については、持っている間に何が起きるのかを後半で見ます。

買った直後に含み損から始まる理由そのものは、金融商品が変わっても同じ形をしています。買値と売値が別に置かれている仕組みはスプレッドとは何かにまとめました。この記事で確認していきたいのは、その差の大きさが金融商品によって二桁分動くところです。

手数料は「1リラあたり何銭」で決まっている

50銭という額が大きいのかどうかは、他の通貨と並べると見えてきます。

通貨1通貨の値段外貨預金の為替手数料(片道・インターネット)
米ドル160円前後25銭
南アフリカランド9円台後半25銭
トルコリラ3円台50銭
※レートは当サイトの週次レポート(2026年8月24日〜28日の週)の水準。為替手数料は三菱UFJ銀行の一覧より、インターネットバンキングでの片道の額です。

手数料は「1通貨あたり何銭」という形で置かれています。パーセントではありません。ドルもランドも同じ25銭ですが、片方は160円のものに乗り、もう片方は9円台のものに乗ります。そしてリラは、3円台のものに50銭です。

ここが、この記事の一番の要点です。通貨が下がっても、手数料の額は円で決まっているので動きません。値段だけが下がっていくと、同じ「銭」が通貨の値段に対して重くなっていきます。1リラの値段がこの19年で二桁から一桁へ落ちてきた通貨では、その重さの変わり方も大きくなります。

2026年1月に、銀行が引き下げた

その重さは、実際に動いています。三菱UFJ銀行は2026年1月13日から、トルコリラ外貨普通預金の為替手数料を変更しました。

窓口は2円50銭から60銭へ、インターネットバンキングは80銭から50銭へ。告知は2025年12月1日のものです。

変更前の手数料を、現在のリラの値段で考えてみます。1リラの値段は3円台です。その1リラを窓口で買うと、レートに加えて片道2円50銭が乗っていました。買う対象そのものの値段と、そこに乗る手数料が、近い大きさになっていたことになります。

銀行が引き下げた理由は書かれていないので、はっきりとした理由は分かりません。ただ、決めたときの通貨の値段を前提にした手数料が、通貨が下がってもそのまま残ります。残った手数料を銀行が動かしたのが、2026年1月でした。

FXだけが、途中で終わらされる

入り口の話はここまでです。ここからは、持っている間に何が起きるのかを見ます。

四つの金融商品のうち、FXだけが違う形をしています。FXは買う額の全部を払わずに、その一部を預けて持つ仕組みです。だから証拠金が足りなくなると、こちらが決めていなくても建玉が閉じられます。強制ロスカットです。

外貨預金・MMF・債券には、この終わり方がありません。買う額を全部払っているので、値段が下がっても、強制的に閉じられることがありません。含み損がどれだけ膨らんでも、持っていること自体は続けられます。

どこまでの下落なら閉じられずに済むのかは、どれだけレバレッジを掛けるかで変わります。その線の引き方は強制ロスカットとは何かにあります。線が引かれる金融商品と引かれない金融商品がある、というのは長期投資をする上で大きな差です。

終わらされない金融商品は、代わりに降りづらい

では、終わらされない方が安全なのかというと、そこも一つずつ違います。

金融商品途中で終わらされるか途中で降りられるかその他
FXある(強制ロスカット)いつでもスワップを毎日受け取る
外貨預金ないいつでも(そのつど手数料)預金保険の対象外
外貨建てMMFないいつでも日々分配・毎月自動再投資
現地通貨建て債券ない市場価格で売るときだけ満期に戻るのはリラ建ての額面

外貨預金は、円の預金と同じ場所にあるように見えますが、預金保険制度の対象外です。銀行が破綻した場合、円の預金のような保護は付いていません。

債券は、満期まで持てば額面が戻ります。ただし戻るのはリラ建ての額面です。リラが下がっていれば、円にしたときの金額はその分だけ小さくなります。満期の前に降りたいときは、市場価格で売ることになります。

外貨建てMMFは、東洋証券のトルコリラMMFで10トルコリラから買え、買付と換金の手数料はかかりません。分配は日々行われ、毎月自動で再投資されます。受け取ったものが自動で元本に戻る形です。FXで毎日受け取る額がどれくらいになるかは、トルコリラ円のスワップポイントで並べました。

高い利回りは、どの金融商品でも同じ場所から来ている

金融商品を四つ並べても、利回りの出どころは一つです。トルコの政策金利37%です。

FXのスワップポイントは、トルコと日本の金利差から出てきます。トルコリラ建ての債券も、同じ金利の水準の上に置かれています。JTG証券が扱うトルコリラ建てゼロクーポン債は、利回りが34%台から37%台という並びです。償還までは2年10か月から8年4か月です(2026年9月3日8時50分時点)。

金融商品を変えても、金利の中身は変わりません。37%という数字が何でできているのか、インフレを引いたあとに何が残るのかは、金利37%の正体で扱いました。金融商品を選ぶことは、この37%の中身を選び直すことではありません。

額面は戻っても、円でいくらになるかは満期の一日で決まる

先に挙げたゼロクーポン債は、利回りが34%台から37%台、償還までが2年10か月から8年4か月でした。ゼロクーポンという名前の通り、この債券は途中で利息を払いません。買ってから償還の日まで、手元には1円も入ってきません。

そして償還のときに戻ってくるのは、リラ建ての額面です。それを円でいくら受け取れるかは、その日のレートで決まります。8年4か月分の結果が、満期の一日に集まる形です。

FXのスワップは、逆の形をしています。受け取りは毎日で、そのつどの円の値段で手元に残ります。高い日も安い日も混ざるので、受け取った部分については、レートの当たり外れが時間で薄まります。ゼロクーポン債には、その薄まりがありません。

外貨建てMMFは、この二つの間にあります。分配は日々行われて自動で再投資されますが、円に戻すのは解約した一度です。円で受け取る額はその日のレートで決まり、そこはゼロクーポン債と変わりません。違うのは、その日を自分で選べることです。

償還まで持つつもりで買うなら、途中でレートがどう動いても、満期に戻ってくるリラ建ての額面は変わりません。変わらないのは額面の方で、円に直したときの額ではありません。リラがどこまで下げてきたのか、そしてどこで決めるのかはトルコリラはどこまで下がるのかにまとめました。

どこで終わるかだけが、違う

四つの金融商品を並べてきましたが、どれを選んでも通貨が下がることは避けられません。金融商品が決めているのは、その下落がどこで終わるかの方です。

FXは、こちらが決める前に閉じられる形があります。外貨預金と債券とMMFには、その形がありません。代わりに、外貨預金は保護の外にあり、債券は満期までリラ建てのまま置かれます。

そして入り口では、1リラあたり何銭という額が引かれます。その額は円で決まっているので、通貨が下がるほど、通貨の値段に対して重くなっていきます。2円50銭という額が1リラ3円台の通貨に置かれていた、というのはそういうことです。

受け取りに税がかかる点はどの金融商品でも同じですが、区分と申告の形は金融商品ごとに違います。FXで受け取ったスワップがどう数えられるのかは、スワップポイントと税金にまとめました。

四つのほかに、投資信託という持ち方もあります。ただしこれだけは、中身の資産と為替取引の通貨が別々に決まるので、四つと同じ物差しでは並べられません。その組み立ては通貨選択型ファンドとはにあります。

入り口で引かれる額と、どこで終わりが来るのか。決められるのは、買う前の一度だけです。あとから別の金融商品へ移すなら、入り口の額をもう一度払うことになります。