含み損を抱えたランド円を、持ち続けるか、それとも損切りするか。決めかねたまま時間が過ぎている、という方は少なくないと思います。
先にお伝えしておくと、この記事では「損切りすべき」とも「持ち続けるべき」とも書きません。それは他人が決められることではないからです。
その代わり、自分で答えを出せる形に問いを組み替える方法をお渡しします。
なぜ「損切りすべきか」に答えが出ないのか
答えが出ない理由は、はっきりしています。含み損の額が、判断材料になっていないからです。
今10万円の含み損なのか、50万円なのかは、これからランド円が上がるか下がるかとは何の関係もありません。すでに動いた分は、もう値段に反映されています。過去にいくら払ったかは、これから起きることを何も決めません。
それでも私たちは、この二つを結び付けて考えてしまいます。「ここまで下がったのだから、そろそろ戻るはずだ」「これだけ損しているのだから、今売るのはもったいない」。どちらも自然な感覚ですが、相場の側から見れば、こちらの取得価格は何の意味も持っていません。
では、どこまで下がるのかを調べれば決められるのか。そちらも当てにはできません(この点はランド円はどこまで下がるのかで扱いました)。予想を出す記事は世の中にたくさんありますが、その予想が当たったかどうかを後から検証したものは、ほとんど見かけません。
問いの立て方を変える:今、同じポジションを新しく建てるか
そこで、問いの方を変えます。
「このポジションを持ち続けるか」ではなく、「今の水準で、同じポジションを新しく建てるか」を考えてみてください。
この二つは、実は同じ質問です。すでに持っているかどうかは、これからの損益に関係しません。今持っている状態と、いったん決済して同じ量を買い直した状態は、これから先については同じものだからです。違うのは、こちらの気持ちだけです。
そう考えると、答えの意味がはっきりします。
今の水準で新しく買うと答えるなら、持ち続けるのは筋が通っています。相場観として一貫しているからです。含み損があるかどうかとは無関係に、この通貨をこの水準で持ちたいと判断していることになります。
今の水準では新しく買わないと答えるなら、持ち続けている理由は、相場観の側にはありません。ここで言えるのはそこまでです。だから売るべきだ、という話ではありません。ただ、自分が何を根拠に持ち続けているのかを理解しておくことは、トレードを続けていく上でとても重要です。
スワップは、判断材料になっていない
ここで、判断を曇らせるものが一つあります。スワップです。
「せっかく毎日スワップが入っているのに、今売ったらもったいない」。これは持ち続ける理由として、よく挙がります。
ただ、受け取るスワップの額は、含み損があるかどうかに一切影響されません。スワップはその時点の金利差と保有している量で決まるもので、いくらで買ったかは計算に入っていません(仕組みはスワップポイントとは何かで扱いました)。
つまり、今決済して同じ量を買い直しても、受け取るスワップは同じです。だとすると、「スワップがもったいないから持ち続ける」は、持ち続ける理由になっていないことになります。スワップが欲しいのであれば、今の水準で新しく建てればよい。そしてそれは、前の節の問いに戻ってきます。
もっとも、スワップが判断材料にならないというのは、スワップに価値がないという意味ではありません。毎日積み上がっていくものであることに変わりはなく、それを目的に持つこと自体は一つの考え方です。ここで申し上げているのは、その受け取りが「今持っているポジションを手放さない理由」にはならないということだけです。同じものが、建て直したあとの口座にも入ってくるからです。
| よく挙がる理由 | 判断になっているか |
|---|---|
| スワップが毎日入る | 新しく建てても同じだけ入る |
| そのうち戻る | 戻る保証はない。過去の最安値は更新されてきた |
| ここで売ったら損が確定する | 気持ちの話で、これからの相場とは別 |
| 今の水準なら、新しくても買う | これだけが相場の判断になっている |
二行目について一言添えておくと、ランド円は過去に何度も最安値を更新してきた通貨です(実例はランド暴落の歴史にまとめています)。「そのうち戻る」は、根拠のある見通しというより、願いに近いことが多いところです。
なお、決済して建て直す場合には、その分のコストがかかります。ここでは深入りしませんが、実際に動かすときは確かめてみてください。
どちらを選ぶにせよ、先に確かめること
問いに答えが出たら、次はその判断を実行できる状態にあるかを確かめます。
持ち続けると決めた場合に確かめるのは、どこまで下がったら耐えられなくなるか、という水準です。これは予想ではなく計算で出ます。求め方は強制ロスカットとは?にまとめてあります。持ち続けるという判断は、その水準まで持ちこたえられて初めて成立します。途中で強制的に決済されるなら、それは持ち続けたことにならないからです。ちなみに、コツコツ受け取ったスワップが急落で吹き飛ぶ非対称についてはランド円はなぜ急落するのかで扱いました。
損切りすると決めた場合については、その後どうするかまでは書きません。ここでお伝えできるのは、決めた内容が実行できる状態にあるかどうかを確かめる、というところまでです。
どちらを選ぶにしても共通するのは、決めた基準を先に書き出しておくことです。何円まで下げたらどうする、という線を先に引いておけば、下げの途中で判断を作り直さずに済みます。線を引かないまま下げに向き合うと、その場の値動きに合わせて基準の方が動いていきます。通貨そのものの性質を押さえておきたい方は南アフリカランドとは?もあわせてどうぞ。
持ち続ける理由は、どちら側にあるか
含み損を見ながら決めようとすると、どうしても判断が止まります。額そのものには、決めるための情報が入っていないからです。
今の水準で新しく買うかどうかを、一度自分に聞いてみてください。持ち続ける理由が相場の側にあるのか、それとも損を確定したくないという気持ちの側にあるのか。他人には見えませんが、自分でなら見分けられます。

