高い金利の通貨を持っていると、スワップポイントが毎日積み上がっていきます。口座の数字が少しずつ増えていくのは、この取引の最も分かりやすい魅力です。

では、その積み上がったスワップは、いつ「所得」になるのでしょうか?

答えは、口座によって違います。受け取った時点で所得になる口座もあれば、建玉を決済するまで所得にならない口座もあります。同じ通貨を同じ量だけ持っていても、どこで取引しているかで、その年の税金が変わることになります。

ここでは、店頭のFX取引の損益がどの区分に入るのかを整理したうえで、高いスワップを受け取りながら持ち続ける口座で起きやすい、税金の非対称を見ていきます。

その損益は、どの区分に入るのか

店頭のFX取引で出た損益は、「先物取引に係る雑所得等」という区分に入ります。国税庁の案内では、2012年(平成24年)1月1日以後の取引について、申告分離課税の対象とされています。

ここで大事なのは、為替差損益とスワップポイントが別々に計算されるのではなく、合わせて一つの損益として扱われることです。買った値段と売った値段の差で出た利益も、毎日受け取ったスワップも、同じ器に入ります。

税率は20.315%です。所得税15%と、その2.1%にあたる復興特別所得税0.315%、それに住民税5%を合わせた数字です。給与がいくらであっても、この区分の税率そのものは変わりません。

もう一つ押さえておきたいのが、通算できる範囲です。この区分の損失は、他の「先物取引に係る雑所得等」の利益とは通算できますが、それ以外の所得とは通算できません。FXで損失が出たから給与の税金が軽くなる、という形にはならないということです。

項目店頭のFX取引での扱い
所得の区分先物取引に係る雑所得等
課税方式申告分離課税
税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
損益に含まれるもの為替差損益とスワップポイントを合わせた金額
通算できる範囲他の「先物取引に係る雑所得等」とのみ。給与などとは通算できない
損失の繰越翌年以後3年内の「先物取引に係る雑所得等」から控除できる
※現在の扱いです。税制は改正されることがあるため、最新の内容は国税庁の案内や、取引している会社の説明で確かめられます。

スワップポイントがなぜ受け取れるのか、その仕組みそのものはスワップポイントとは何かで扱っています。

含み損は、税金の計算に入っていない

決済していない含み損は、その年の損益には入りません。評価としては大きなマイナスが出ていても、税金の計算の上では、まだ何も起きていないことになります。

一方で、スワップは受け取った時点で所得になる口座があります。この二つを重ねると、落ち着かない状態が生まれます。口座の評価はマイナスなのに、その年に受け取ったスワップには税金がかかる、という年です。

この非対称は、二層構造の金利差で分けて見ると、輪郭がはっきりします。第一層であるスワップは、毎日プラスで確定していきます。第二層である為替のマイナスは、決済するまで存在しません。税は、この二つの層を別のものとして扱います。税の計算に入る「1日分」がどこで切り替わるのかは、スワップが付く区切りの時刻で扱っています。

円側についても同じです。円が急に強くなれば、ランド円の含み損は増えます。それでも、その年に受け取ったスワップの課税が、その分減るわけではありません。増えた含み損が数字として意味を持つのは、決済したときです。

いつ所得になるかは、通貨ではなく口座が決める

スワップがいつ所得になるかは、取引している会社と商品によって分かれています。

GMOクリック証券は、同じ会社の中で扱いが分かれている例です。FXネオ取引については「スワップポイントの受払いが日々発生するため原則、受払いのあったスワップはすべて課税対象となります」と説明されています。一方でくりっく365取引については「建玉の決済時にスワップポイントの受払いがあるため、未決済建玉のスワップポイントは課税対象ではありません」とされています。

SBI FXトレードのFX取引では、「建玉を反対売買、決済した段階で課税対象となります」と案内されています。

スワップが所得になるタイミング公表されている例
日々課税型受払いが発生した時点。決済していなくても対象になるGMOクリック証券 FXネオ取引
決済時課税型建玉を決済した時点。未決済の分は対象にならないGMOクリック証券 くりっく365取引/SBI FXトレード FX取引
※2026年8月時点で各社が公表している内容にもとづきます。同じ会社でも商品によって分かれることがあり、扱いが変更される場合もあります。

つまり、同じ通貨を同じ量だけ持っていても、口座が違えば今年の所得に入る金額が変わります。通貨の選び方ではなく、口座の仕様の話です。

なお、売り持ちなどでスワップを支払う側になった場合、その支払いは同じ器の中でマイナスとして計算されます。毎日支払いが出続ける状態のコストの考え方は、マイナススワップとは?で整理しています。

給与のある人には、20万円という線がある

給与を1か所から受けていて、その給与のすべてが源泉徴収の対象になっている場合を考えます。給与所得と退職所得を除いた各種の所得金額の合計が20万円を超えると、確定申告が必要になります。

この線は、高いスワップを狙う口座では、思っているより近いところにあります。ランド円のスワップは、おおむね10万通貨あたり1日130〜200円程度が目安です。会社によって差があり、同じ会社でも日によって変わります。どこまで積み上がるかは持っている量と期間によりますが、量を増やしていけば、この線に届く場面も出てきます。

気をつけたいのは、住民税の扱いが別だという点です。所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税については申告が必要になることがあります。ここは住んでいる自治体の案内で確かめられます。

損失を3年先まで運ぶには、申告が要る

この区分の損失は、翌年以後3年内の「先物取引に係る雑所得等」から控除できます。大きく下げた年に損失が出ても、その先の利益と相殺できる仕組みが用意されているということです。

ただし、黙っていて自動的に運ばれるわけではありません。損失が出た年に、「申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」と「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添えて確定申告をしておく必要があります。そのあとも連続して申告を続けることが、控除を受けるための要件になっています。

ランド円は、これまで何度も大きく下げてきました。ランド暴落の歴史を見ると、数年に一度はそういう年が来ています。損失を確定させた年に申告をしておくかどうかで、その先に受け取るスワップの手取りは変わってきます。

自分の口座で確かめられること

手順にすると、三つです。

なお、同じ通貨でも、投資信託で持っている分はここまでの扱いとは別です。毎月受け取る分配金には、運用の利益から出て課税される普通分配金と、自分の元本が戻ってきただけで課税されない元本払戻金があります。その形の投資信託については通貨選択型ファンドとはにあります。

個別の判断は、税務署や税理士に確認できます。ここで整理したのは、確認する前に知っておくと質問しやすくなる部分です。

そのスワップは、いつ所得になるのか

同じ通貨を、同じ量だけ、同じ期間持っていても、口座が違えば今年の所得に入る金額は変わります。スワップの高さを比べる前に、その口座がどちらの型なのかを見ておけます。

そして、含み損と受け取ったスワップは、税金の上では別のものとして扱われます。値が下がったまま持ち続けるかどうかを考えるとき、この非対称も判断の材料の一つになります。塩漬けのランド円をどうするかで扱った「持つ理由」の中に、税金という項目を足しておけます。