世界的なAI・半導体株の急落で市場全体が揺れた一週間でした。リスクオフの逆風はランドにも及びましたが、ランド円(ZAR/JPY)は意外なほど底堅く、最終的に9円77銭で週を終えています。なぜ大きく崩れなかったのか、来週どこを見ればいいのか。順番に整理していきます。

今週のランド円(6/22〜26)

日付始値高値安値終値前日比
6/22(月)9.849.879.789.85+0.39%
6/23(火)9.859.869.749.77-0.80%
6/24(水)9.779.819.699.77+0.01%
6/25(木)9.779.849.749.80+0.36%
6/26(金)9.809.819.779.77-0.33%

前週末(6/19)の9円83銭近辺からスタートし、週半ばの水曜には一時9円69銭まで下押しする場面もありました。ただ、そこからは下げ渋り、週末は9円77銭で着地。週間の値幅は9円69銭〜9円87銭と、ニュースの派手さの割には落ち着いたレンジに収まっています。

今週ランドを動かした材料

外部要因:世界株安と、それを打ち消した円安

今週いちばん大きかったのは、南アそのものではなく、世界的なAI・半導体株の急落でした。週明け早々、韓国のKOSPIが一日で約10%下落して取引が一時中断、日経平均も3%超下げ、ソフトバンクグループに至っては15%安と、ハイテク株を中心に強烈な売りが出ています。背景にあるのは、ここまで急ピッチで上がってきたAI関連株の「期待値リセット」。業績そのものが崩れたというより、上がりすぎた分の調整という性格が濃い動きでした。

こうしたリスクオフ局面では、新興国通貨であるランドは売られやすくなります。実際、火曜から水曜にかけてランド円は週安値(9円69銭)まで下押ししました。

ところが、ここで効いてきたのが円安です。先週のFOMC(6/16〜17)で、新議長ウォーシュ氏の初采配のもと、米連邦準備制度は政策金利を3.50〜3.75%に据え置きつつ、声明から「利下げ寄り」の文言を削除しました。さらに年末の金利見通しを引き上げ、「次の一手はむしろ利上げかもしれない」という、かなりタカ派寄りのメッセージを出しています。これを受けてドルが強含み、ドル円は161円台まで円安が進行。

つまり今週のランド円は、「リスクオフでランド売り」と「円安で下支え」が綱引きになった結果、大きく崩れずに済んだ、という構図でした。ランド円がドル円とドルランドの掛け算で動くことが関係しています。(参考:南アフリカランド(ZAR)とは?

南ア要因:今週は比較的おとなしめ

南ア国内のニュースは、今週は相対的に静かでした。対ドルではランドは16.5前後と、ここ数カ月の高値圏で底堅く推移しています。これを支えているのが、4,000ドル台で高止まりを続ける金(ゴールド)価格です。南アにとって金は最大級の輸出品で、価格が高いほど外貨が稼げて経常収支が改善するため、ランドの「クッション」として機能しています。

金融政策面では、SARB(南アフリカ準備銀行)が5月に政策金利を7.00%へ引き上げた流れが続いています。5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比4.5%と、4月の4.0%から加速。市場予想の4.7%は下回ったものの、インフレがじわりと上向いていること自体は変わりません。クガニャゴ総裁も追加利上げの可能性に引き続き含みを持たせています。(参考:SARB政策金利ガイド

スワップ・キャリーのメモ

ランド円を保有している方にとって気になるスワップですが、SARBの政策金利が7.00%という高い水準にあるため、ランド円のスワップ妙味は引き続き残っています。今週のように相場が一進一退でも、保有しているだけで日々受け取れるスワップは、長期保有派にとっての下支えになります。

ただし、スワップは政策金利の差で決まるものなので、次回SARB会合(7/23)が当面の最大のチェックポイントです。ここで利上げ・据え置きどちらに動くかで、スワップ水準の方向感が変わってきます。(スワップの仕組みそのものはランド円スワップポイントの基本で詳しく解説しています)

来週の注目ポイント

まとめ

今週のランド円は、世界株安という強い逆風を受けながらも、円安に支えられて9円77銭で踏みとどまった一週間でした。ポイントは、ランド円は「ランドの事情」だけでは動かず、円側の事情(ドル円)との掛け算で決まるということ。今週はまさにその典型例でした。

この「リスクオフでランド売り/円安で下支え」という綱引きの構造をつかんでおいて、来週以降のランド円のニュースを見たときに、「今はどっちの力が勝っているのか」を意識することが大切です。